仮想通貨を相続したときの税金:相続税評価と取得価額
仮想通貨を保有したまま亡くなった場合、遺族には性質の異なる二つの税金が、別々のタイミングでかかります。ひとつは相続時点の価額に対する相続税です。もうひとつは、相続人がその仮想通貨を売却または交換したときの所得税です。二つは全く別の金額をもとに計算されるため、その差が仮想通貨の相続でもっとも負担の大きい部分になります。
本記事では、国税庁が実際に公表している内容を整理し、確定している取り扱いと、相続人が期限が動き出す前に集めておくべき資料を説明します。一般的な情報であり税務上の助言ではありません。ご自身の取り扱いは国税庁または税理士にご確認ください。
相続した仮想通貨には相続税がかかる
国税庁は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」の4-1「暗号資産を相続や贈与により取得した場合」で、この点を明確にしています。被相続人等から暗号資産を相続もしくは遺贈または贈与により取得した場合には、相続税または贈与税が課税されます。
その理由づけも理解しておく価値があります。相続税法では、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を取得した場合が課税対象とされています。暗号資産は資金決済法上「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されているため、既存の定義の内側に入り、特別な改正を要しませんでした。国税庁は相続税法2条および2条の2、相続税法基本通達11の2-1を挙げています。
実務上の意味は明快です。家族の誰も存在を知らなかった取引所口座やハードウェアウォレットであっても、相続財産に含まれ、課税対象になります。
評価方法:課税時期の取引価格
同じFAQの4-2「相続や贈与により取得した暗号資産の評価方法」が評価ルールを定めており、想像よりも実務的です。
財産評価基本通達には暗号資産についての定めがありません。そこで国税庁は、評価方法の定めのない財産の評価を扱う評価通達5に基づき、外国通貨に準じて評価するという立場をとっています。活発な市場が存在する暗号資産は、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。
実際に手を動かすときに効いてくるのは、FAQの注書きにある次の四点です。
- 活発な市場が存在するとは:暗号資産取引所または販売所において十分な数量および頻度で取引が行われ、継続的に価格情報が提供されている状態を指します。
- 残高証明書が使える:暗号資産交換業者が納税義務者の求めに応じて提供する残高証明書に記載された取引価格も、公表する取引価格に含まれます。相続の場面では、これがもっとも取得しやすい証拠資料になります。
- 売却価格でよい:販売所において購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、納税義務者が交換業者に売却する価格で評価して差し支えありません。
- 複数の取引所がある場合:被相続人が複数の交換業者で取引していたときは、納税義務者が選択した交換業者の公表する取引価格で評価して差し支えありません。
活発な市場が存在しない暗号資産は、客観的な交換価値を示す相場が成立していないため、その内容や性質、取引実態等を勘案して個別に評価することになります。流動性の乏しいトークンや、実質的にほとんど取引されたことのない銘柄がここに当たります。表計算ソフトではなく専門家の判断が必要になる領域です。
基礎控除
相続税は、相続財産の全額にいきなりかかるわけではありません。国税庁タックスアンサーNo.4152「相続税の計算」では、基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数とされています。
暗号資産は、この基礎控除を適用する前に、他の相続財産と合算されます。したがって、他の財産が少なければ、保有量が控えめな暗号資産は相続税を生じさせないこともあります。逆に大きな保有があると、本来なら基礎控除の範囲に収まっていた相続を、課税される側に押し上げます。評価は相続開始時点で固定されるため、その後に相場が下落しても、いったん確定した評価額に基づいて納税額が決まる点には注意が必要です。最新の金額は国税庁または税理士にご確認ください。
見落とされやすい4か月の期限
相続税の申告とは別に、被相続人自身の所得税の申告が必要になる場合があります。国税庁タックスアンサーNo.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」では、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納付を行うこととされています。
被相続人が亡くなった年に売買やスワップを行っていた場合、あるいはステーキングやレンディングの報酬を受け取っていた場合、その所得はこの準確定申告に含まれます。どの取引所に口座があったのかを家族がまだ把握しきれていない段階では、4か月は決して長くありません。口座の洗い出しを後回しにせず最初の作業にすべき理由がここにあります。
二つめの税金:相続人が売却したとき
相続税は相続開始時点の価額を清算するだけです。相続人がその暗号資産を売却したときに何を負担するかは、まだ何も決まっていません。
日本では暗号資産の利益は雑所得として扱われ、給与など他の所得と合算されたうえで、5%から45%の累進的な国税に一律10%の住民税が加わり、実効的な上限はおよそ55%になります。暗号資産同士のスワップもそれ自体が課税対象の譲渡であり、円換算で評価されます。つまり、相続した銘柄を組み替えただけで、円を一切引き出していなくても二つめの税金が発生します。取得価額は総平均法または移動平均法で計算し、選んだ方法は継続して適用する必要があります。
取得価額が争点になる理由
二つめの税額を決めるのは相続人の取得価額であり、これは相続税の評価額と自動的に一致するわけではありません。
FAQは贈与と遺贈については明確です。2-10では、個人が贈与(相続人に対する死因贈与を除く)または遺贈(包括遺贈および相続人に対する特定遺贈を除く)により暗号資産を移転させた場合、その時の価額(時価)を総収入金額に算入する必要があり、取得した個人がその後譲渡する際の取得価額は、その贈与または遺贈の時における価額になるとしています。根拠として所得税法40条、所得税法施行令87条、所得税基本通達40-2および40-3が挙げられています。
ここで括弧の中の除外規定をよく読む必要があります。相続人による通常の相続は、まさにこのルールから除かれている場面です。生前贈与で生じる時価への洗い替えは、通常の相続では起こりません。その結果、相続人は、被相続人の生存中に生じた値上がり益に対して、同じ暗号資産についてすでに相続税を負担したうえで、さらに所得税を課される可能性があります。これがこの分野でよく指摘される二重の負担です。
取り扱いは移転の法的な形式によって変わります。相続なのか、遺贈なのか、死因贈与なのか、特定遺贈か包括遺贈か、受け取る側が法定相続人かどうか。これらの違いが結論を左右します。売却する前に、ご自身の事実関係に即して税理士に確認してください。
集めるべき資料と順番
- すべての取引所口座とウォレット。ハードウェアウォレットとシードフレーズの控えを含みます。誰も引き出せない暗号資産にも課税されるため、アクセス不能なウォレットは最悪の結果です。
- 各取引所の、相続開始日時点の残高証明書。FAQが認める評価の証拠資料になります。
- 被相続人の取引履歴を、最初の取得までさかのぼって全期間分。将来の譲渡計算はこれを土台にします。時間が経つほど復元は難しくなります。
- 亡くなった年のステーキング、レンディング、報酬の記録。準確定申告に必要です。
複数の取引所とオンチェーンのウォレットにまたがる被相続人の取得価額の復元は、専門家報酬がもっともかさむ部分です。CSVの寄せ集めではなく、すでに突合済みの履歴から始めることが、費用をデータ入力ではなく判断に振り向ける方法になります。所得税側の全体像は日本の仮想通貨の税金で、専門家に依頼する前の確認事項は仮想通貨の税理士の探し方で解説しています。
本記事は一般的な情報であり、税務上の助言ではありません。制度や金額は変わります。最新の取り扱いと金額は国税庁または有資格の税理士にご確認ください。
FAQ
かかります。国税庁の暗号資産FAQ 4-1では、被相続人等から暗号資産を相続もしくは遺贈または贈与により取得した場合には相続税または贈与税が課税されるとされています。相続税法が金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を課税対象としており、暗号資産は資金決済法上の財産的価値に当たるためです。
同FAQ 4-2により、活発な市場が存在する暗号資産は、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格で評価します。評価通達に定めがないため、評価通達5に基づき外国通貨に準じた扱いとなります。交換業者が発行する残高証明書の取引価格も認められ、複数の交換業者で取引していた場合は納税義務者が選択した業者の価格で差し支えありません。
自動的にそうなるわけではありません。FAQ 2-10の時価への洗い替えは贈与および遺贈についての定めであり、相続人に対する死因贈与、包括遺贈、相続人に対する特定遺贈は明文で除かれています。通常の相続はまさにその除外に当たるため、被相続人の生存中の値上がり益についても課税される可能性があります。売却前に税理士にご確認ください。
国税庁タックスアンサーNo.2022により、被相続人の準確定申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。亡くなった年の売買、スワップ、報酬による所得はここで申告します。相続税の申告とは別の手続きです。
